現代において純愛はどこに行ってしまったのだろうか。
そんな思いに駆られながら本作を読み進めた。
離婚問題にスポットをあてながら都会の夫婦の姿を描く。
本作において問題となるのは冒頭から登場する「檻」である。
その中に何が入っているのか、
読者はタイトルから推測してバレバレの状態なのだが
ストーリーはおかまいなしに乾いた熟年夫婦の姿をつむいでゆく。
しかしタイトルだけが悪いのではない。
文中の「檻」の描写として
「あのピンクの布がかぶせてある檻からはガオーと猛獣の咆哮が聞こえる…」
「ああ、獣臭い。冬は静かなのに夏になるといつもこうだ。」
など熊を思わせる部分が目立ち、ある種読者にはどんでん返しのフリであるかのような
そんな気配さえ漂わせるのだが、ここを読んでいる読者にはお分かりのとおり
ああやっぱりね、という熊が放たれるのだ。
離婚と熊。一見関係ないようで、実際関係ない。
しかしこの熊は夫婦であることを否定する現代社会に対しての
アーヴィングからのアンサーベアーであることが推測される。
しかし暴れまくるというだけの理由で熊を使うというのはいかがなものか。
(2006年11月未読ながら著)