夜、自転車に乗っていた。
花壇の壇部分、白い壇に車のヘッドライトの光が。
猫だ!
驚いてハンドルを切って、冷静になってみると自分の影だった。
危ない!
と思ったのは自分の影だったのだ。
いやー、危なかった!
と思ってもそれは自分の影だったので無駄だったということだ。
危なかったぞ!
そんな風に憤ったとしても自分の影だから無駄とかダメとか言われる部分だ。


自分の影が猫だった。
そういえば祖母がする自分の思い出話に
ゆらゆらゆれる自分の影の髪の毛を見て遊んでいた、というものがある。
自分の影は友達だった。
その後影を意識しないまま二十数年を過ごした。
その間影は何をしていたかといえば、自分と全く同じ行動をしていた。
同じ釜の飯を食い、一つ屋根の下に暮らし、寝食を共にしていたのだが意識することはなかった。
そして気づけば自分の影は猫になっていた。


かわいがってやらなければなあ、と思う。
いいもの食わせてやろうなあ、と思う。
こうして俺は猫を飼うことになった。
初めてのペットであり、初めての家族なので、ドキドキしている。
ひとつの命を養うことに対しての責任を感じつつ、
今、屁をこいている。