ミノを探し歩く。
渋谷のデパ地下のケーキ売り場では
甘い匂いに腰がくだけそうになった。
いかんいかん、ミノを探さなければ、と発起する。
中国の昔話とかで竹やぶから音楽やら女の声やら聞こえてきて
近づいてみれば妖怪で食われてしまう話とかで
あれは東急B1のケーキ売り場の匂いも絶対したに違いない。
妖怪に食われそうだった。


足を棒にしてもミノはない。
三軒茶屋の遅くまでやってる業務用スーパーに行くも
ミノだけ見当たらず。
せっかく来たのだから何か買いたいと思い、
なんとなくアメリカンコーラが飲みたくて買った。
店を出てそのまま飲む。
不味い。
不味いと思ったら40円だ。
君は40円だから不味いのか不味いから40円なのか。
40円の不味さ。
しかしこの40円の不味さというこじんまりさがいいじゃないか、
と思い込もうとするのを拒絶するくらい腰の入った不味さに悩む。
本腰入れて不味くしようとするアメリカ人。
かつてCMで森高千里が「コーラとジンでアメリカ人♪」と歌っていて
当時は何のことか分からなかったが
今はこれかと思い当たるものがある。
「もっと不味くしなければ!」せかせかあたふたしてるあの人たちだ。
駅から家路を急ぐ人には缶チューハイを飲みながら歩いてる人に映っただろうか。
そんないいものじゃねーぞ(アメリカンコーラ)と思いながら再び駅まで歩く。
家路を急ぐ人、おれはミノを買わなければならないのだ。


ミノは持ち帰りできる焼肉屋を見つけてようやく買えた。
1000円なんですけどいいですか?と念を押される。
焼肉屋の肉を家に持ち帰ってみると高い。
しみじみ高いなと思う。
そのことを店主は痛いほど分かっていたのだ、と今思う。


堀内健のエッセイ集が可笑しいです。
ラス・メイヤーの映画を観に行ったら満席でした。
桂枝雀の落語をyoutubeで見る日々です。