バスに乗ってぼんやり外を眺めていると
こっちを向いた中年の男がいて、その男が急に走り出した。
次のバス停で乗るつもりなのである。
そういういつもの風景である。
バスの高みから見下ろしているおれは
うまく乗れればいいのにな、と
いやみったらしく気にかけたりもしていて
そしてバス停が見えて、
ああうまく乗れてよかったな、
と思ったら男はそのまま走ったままでバスとの併走は続いたのだが
すぐにバスが追い抜いて男は後方へ消えた。
かけっこだったのである。


なんだバカか、しようがねえな、と
急に江戸っ子の気分にさせられるのもバスの醍醐味だと思う。


いや、そんなことはどうでもいい。
今日アップされている記事が自分にとってものすごい出来事だった。
デイリーポータルZ:ダム湖に沈んだカメラを見に行く
佐野くんや大塚くん、刈谷くんにみかちゃん、などなど
そんな普通の友人たちに読んでほしい記事で、
おれの今年はもうこれでいいや、と思えるくらいの書きもの体験だった。
まだ1月の半分に到達しようかというところだけれども。


読んでる人には感動してほしくはないんだけれども
書いてる自分がものすごい感動してしまった動画があって、
「沈んだカメラが最後に撮った映像を再現する」って動画で
気持ち的には東南アジアに出征した息子が遺骨になって帰ってきて
10年経って母親が息子が見た風景をかつての戦地に見に行くくらいの
そんな気持ちだったんだけども
そこに映っていたのは
おれ、曇天、逆さになったダム湖が映ったと思ったら、水、そして暗闇、
画像の荒さも相まってこんな泣ける動画はないぞ、と
まあそういう風に思ってんだろうなあと
全部ひっくるめて笑いながら読んでいただければと。