道に迷う。
青山や表参道が近いはずなのになぜか暗い住宅街を歩く。
ところどころ雪が残っている。
唐突にでかい寺に出る。
地図ではこのあたりのはずなのだが、と携帯の画像を見ている。
でかい寺には明かりも灯っておらず暗い。
暗い場所がでかい。
車を待っているのか
割烹着姿のお母さんが家の外に出ている。
番地について尋ねる。
この奥かも、と言った先も暗い。
あまりにも暗いので先には進まない。
ここのはずなのだが、と狙いをつけた一角をぐるぐる回る。
回っているはずなのに違う角に出る。
あそこには有名な人がよく来るのだけれど、
とお母さんが指差した店には看板も出ていない。
すりガラスごしにはあいまいな色した服がかかっている。
ムダにした、と坂を上がる。
ミリタリーショップがポツンとある。
入るとボスニア紛争で使われたブーツだ、と薦められる。
なんでも幻なんだそうだ。


こういう所を探しているんですが、と店員に聞いてみる。
へえ、それじゃあ坂の下ですかねえ。
と気がないそぶりで靴の紐を結わえている。
迷っていたのは坂の下と呼ばれるところらしい。


普通の住宅街である。