隣家のお父さんがこわい。
スキンヘッドかつパンツ一丁で平日の昼間からベランダでわしわししている。


おい、わしわしってなんだ!とお思いの方、
大北!わしわしってなんだよ!とお思いの方、
わからないのである。


スキンヘッドが怖くてパンツ一丁が怖くてわしわしがわからないのである。
ちらっと目をやってまず飛び込むスキンヘッド。
これは目をあわせられないな、と反射的に視線を下にやるとパンツ一丁。
一丁。
一丁。


言葉にエコーがかかって意識が遠のいていく。
もやがかったイメージの下の方では何かわしわしやっている。
わしわしやっているな。
と思った次の瞬間にはおれは自転車にまたがっている。
意識を深層に送り込んで忘れ去っている。
怖いから。


あれは何をわしわしやっていたのだろう、と深層からイメージを掘り返している。
む。
わしわしやっている。
わしわしやっているぞ。


あれは何だ、たわしか。
たわしのようなものでわしわしやっているぞ。
たわしで何をわしわし…もやがかかってよく見えないがわしわし
もや、いや、光り輝いているあれは、星雲?
宇宙?ビッグバン?生命の起源!?


と隣のおっさんがわしわしやるおかげで
おれは深層に沈むアカシックレコードに到達することができて
事の始まりから終わりまで全て知りえたのだ。