ネバダ州は砂漠の町、日本でいえば鳥取県のような感覚なのだろうか、
本著の舞台となる田舎町では新たな町おこしとしてお笑い合戦が繰り広げられる。
ジャッカスなどに見られるスケートカルチャー延長線上の身体的なユーモア。
主催者となる新町長と町人との複雑な人間関係をもとに
実に混沌としたアメリカの闇を鮮やかに見せてくれる。
尻を出す、前を出す、なんならへそを出すのが新しいのだろう、いやそもそも顔がおもしろい、
などなど次第にエスカレートをしつづけ複雑化していく笑い。
複雑化し細分化し、混迷の時代はピークを迎える。
軋轢、不人気から追い詰められた町長は昔を懐かしがるように
一人身体的な笑いをつきつめるも次第に相手にされなくなる。
狂った町長は熊撃ちのネルソンと結託し、
祭りの最終日、華やかな移動式遊園地のど真ん中に熊を放つのだった。
最終的に行き着いた笑いが熊というのが非常に興味深い。
アイヌ文化に例を見ずとも熊とはすなわち自然界の人間のことであり
荒廃した人工の産物に自然をぶち込んだ町長の姿に
自然との共生を訴える極めて現代的な共感覚を抱かせるが
著者のアーヴィングが描いたラストとは「けれどみんなドン引き」であった。
自然対人間、もはや時流は止められないことを示した寡作である。
(2006年10月、未読ながら著)